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2023年度先天代謝異常症患者会フォーラムレポート

作成日:2024.06.06

 2024 年 1 月 27 日(土)に2023年度先天代謝異常症患者会フォーラムがWEB 配信で開催されましたのでご報告いたします。

 今回初めての試みといたしまして、発表者の動画視聴をご希望の方には限定公開いたします。JaSMIn事務局宛(jasmin-mcbank@ncchd.go.jp)に「①お名前②患者登録の有無③年齢④疾患名⑤メールアドレス⑥視聴を希望する発表者のお名前」を記載してご連絡ください。事務局よりメールにて返信いたします。
※YouTubeでの限定公開(アドレスを知っている方のみがアクセスできる状態)としておりますので、ホームページにURLを貼る、ブログ/SNSにURLを掲載するなど、第三者がアクセス可能な状態にすることは決してなさらないようにお願いいたします。

 

1.「開会のあいさつ・当学会の取り組みについて」
  日本先天代謝異常学会理事長 中村公俊先生(熊本大学小児科)
 日本先天代謝異常学会の取組として、「①国際プレゼンスを向上させる②次世代リーダーの育成とジェンダーギャップの解消を目指す③難病診療におけるレジストリー構築、基礎・臨床研究の推進④関連学会、研究班、患者家族会、診断や治療にかかわる多くの皆様と情報共有する⑤学会員と患者様にとって持続可能な診療の支援を目指す」という役割を担っている、と説明がありました。
 また2024年11月に東京で日本先天代謝異常学会学術集会、2025年には京都で国際先天代謝異常学会学術集会が予定されており、先天代謝異常に関わる世界中の研究者、医師、患者家族会が集まる予定です。今後学会としても患者家族と情報共有しながら行っていきますので宜しくお願い致します、と話がありました。

 

 

2.「先天代謝異常症に対する新たな治療法 遺伝子治療とは」
  自治医科大学小児科遺伝子治療研究センター  村松一洋先生
 村松先生からは、「遺伝子治療とは」「遺伝子治療の課題」「治療開発の現状」「治療例」という内容で、遺伝に関する基本的な知識、遺伝子治療の種類、開発状況 に関するお話がありました。また、国立医薬品食品衛生研究所遺伝子医薬部(開発品リスト | 国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子医薬部 (nihs.go.jp))のホームページの紹介がありました。ご自身の病気の治療薬について、どの国で承認されているか、あるいは研究が進んでいるのかといった最新の情報を得られる日本のサイトになります。随時アップデートされていて、誰でもインターネットでアクセスできますので参考にしてください。
 また、遺伝子治療の利点と課題、実際に治療に遺伝子を応用してみてどうか、など治療例(AADD欠損症、OTC欠損症、脊髄性筋萎縮症)の紹介がありました。最後にまとめとして、「遺伝子治療は難治性疾患の治療を実現可能」「安全性・有効性は常に向上を目指して研究が進行中」「有害事象があり、厳重な治療管理体制が必要」「早期発見・早期治療開始が重要」「国内での開発・承認は欧米中より遅れている」「研究者・アカデミアの努力だけでなく国家戦略が必要」と話がありました。

 

 

3.「フェニルケトン尿症の新しい治療」
  大阪公立大学大学院医学研究科  新宅治夫先生
 続いて新宅先生から、「高フェニルアラニン血症の治療基準の変遷」「思春期(15歳)から成人期の治療と管理」について解説がありました。その中で、2023年3月に製造販売承認を取得したパリンジック皮下注がどのように効くか、どのような薬か、安全性、副反応、副反応の予防軽減のための前投薬エピペンなどについて説明がありました。治療と管理については、「①厳しい食事治療(Phe制限食)により、思春期から成人期にかけてコンプライアンスが悪くなり、治療を継続できずに中断することがある②思春期前から治療の必要性を十分に説明し、生涯治療を続けられるように栄養士と共に栄養指導を実施する③薬物治療については、BH4の内服やパリンジック皮下注によりできるだけ自然蛋白を摂取できるようにする。」、と話がありました。過去を振り返ると、40数年前には食事療法一択でした。15歳未満の方とBH4が効かない方は従来通り家族も協力して食事療法を続けないといけないですが、15歳以上には幸せな明るい未来が待っていますので、是非頑張って治療を続けていただきたい、と新宅先生からのエールがありました。

 

 

4.「小児期発症の慢性疾病患者さんの自立支援について」
  国立成育医療研究センター 臨床研究センター 掛江直子先生
 続いて掛江先生は、「自立とはすなわち、依存先を増やすこと」であり、サポートの選択肢を多くもつことが大切である、という話から始まりました。「小児慢性特定疾病対策による支援」「難病対策と小児慢性特定疾病対策の関係」「小児慢性特定疾病児童自立支援事業(療養生活支援/相互交流支援/就職支援/介護者支援/そのほかの自立支援)」について具体的な説明がありました。子どもの成長に合わせ、その時その時に必要な支援を相談し、成長を助けていくことが必要です。誰に相談したいかわらないときは自立支援員がサポートしてくれますので、まずは相談しましょう、と提案がありました。「成人移行支援」についても説明があり、移行期医療・成人移行支援の目的、保護者による自律(自立)支援の子どもとの向き合い方、病気・治療に関することの詳細な解説とともに、過保護過干渉は時に子どもの成長発達を阻害してしまうので注意が必要、と話がありました。また、移行支援・自立支援情報共有サイト(移行支援・自立支援|情報共有サイト (transition-support.jp))や小児慢性特定疾病情報センター(小児慢性特定疾病情報センター (shouman.jp))などの情報提供もありました。

 

 

5.「先天代謝異常症患者登録制度(JaSMIn)の最新報告」
  国立成育医療研究センター遺伝診療センター 津島智子
  埼玉医科大学ゲノム医療科 奥山虎之先生
 続いて JaSMIn 事務局と奥山先生から、先天代謝異常症患者登録制度(JaSMIn)の最新状況について報告させていただきました。患者登録事業を開始し今年で 10年目となり、登録状況とともに、JaSMIn を活用した調査研究が新薬開発に貢献した例も挙げ、改めて登録制度維持の重要性についてお話しました。今後も皆様の生活の質の向上と健康の増進につなげるため、皆様との繋がりを大切にJaSMIn の運用を続けてまいります。 また、相互交流しやすいホームページをリニューアルするために取り組んでおりますので、今後ともご協力を宜しくお願い致します。
 奥山先生からは、10周年を迎えた先天代謝異常症患者登録制度について研究活動への貢献を中心に話がありました。先生が取り組まれた「ムコ多糖症Ⅱ型患者の成長・発達状況に関する研究」を例に研究成果、相互のコミュニケーションの場としての意義についてお話がありました。

 

 

 

 

6.「閉会のあいさつ」
  順天堂大学難治性疾患診断・治療学 村山圭先生
 フォーラム最後の挨拶では、村山先生から熱いメッセージが送られました。「患者会との連携、学会への患者家族会の参加、医療者、患者、企業、研究者が一緒に前に進むことが大事です。このフォーラムは患者家族と一緒に作っていきたいと思っています。今後も患者家族の皆様がかかわれるような取組をしていきたいと思いますので、意見やアイデアを寄せていただければ積極的に考えていきたいと思います。皆様どうもありがとうございました。また来年お会いできることを楽しみにしております。」、と会が締めくくられました。

 

 

 以上、2023年度先天代謝異常症患者会フォーラムが、盛況のうちに閉会しましたこと をご報告いたします。演者・座長の先生方、運営にご尽力いただいたフォーラム事務局の皆様、そしてご参加いただきました皆様へ、改めて御礼申し上げます。

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