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JaSMIn通信特別記事No.59

作成日:2021.12.09

遺伝カウンセリングではどんなことが相談できるの?

 

東京大学医学部附属病院・千葉県こども病院

秋山 奈々(認定遺伝カウンセラー)

 

 みなさん、はじめまして。認定遺伝カウンセラーの秋山奈々と申します。今回は「遺伝カウンセリング」と私たち「認定遺伝カウンセラー」について紹介させていただき、少し身近に感じてもらえるきっかけが作れればと思います。

 

1.遺伝カウンセリングってどんなもの?

 この記事を読んでくださっている方の中にも実際に遺伝カウンセリングを受けた方もいらっしゃるかもしれません。これまでにもこのJaSMIn通信特別記事では、私と同じ認定遺伝カウンセラーである慈恵会医科大学病院の原田さんが遺伝カウンセリングのことを紹介しています。そちらも併せて読んでいただけると嬉しいです(記事はこちら)。

 

 遺伝子の解析技術や医療技術が進歩したことによって、様々な遺伝性疾患(遺伝子や染色体の変化が症状に繋がる疾患)が明らかになってきました。保険診療で実施できる遺伝子検査の数も増え、これまで以上に「遺伝」のことが身近になってきています。自分自身や家族が遺伝性疾患と診断を受けたとき、「なぜこのことが起きたのだろう?」という科学的な側面に対する疑問と、「なぜ私たち/私たちの子なの?」という答えのない感情や思いを持つことがあります。

 1つ目の科学的な理解を求める気持ちに対しては、疾患に関する情報、遺伝子と疾患の関係や、遺伝子の変化がどのようにして起こったのか、どのように疾患に関するかといった医学的情報提供が必要になります。2つ目の「なんで?」という答えのない気持ちに対しては、まずそのやり場のない気持ちを聴き、今悩んでいること困っていることにどう向き合うか一緒に考えていく必要があります。

 

 

 患者さんやご家族に対してこの両方のサポートを行う場が遺伝カウンセリングであり、簡単にまとめると「遺伝に関する疑問やお悩みや心配の相談窓口」です。このような場面で専門の医師と一緒に対応をさせていただくのが、我々認定遺伝カウンセラーです。「遺伝」と「カウンセリング」がセットになっているので、少しハードルが高いな・・と感じる方もいらっしゃるかもしれません。「こんなこと相談していいのかな。」を相談して大丈夫な場所があることをまず知っていただければと思います。

 

 もちろん、日常の受診の中で担当医の先生に質問をしていただくこともとても大切です。一般的に遺伝カウンセリングは約1時間~1時間半程度のお時間を使っています。もう少しゆっくり時間を使ってまとまった話をしたいな、とか、家族も一緒に話をしたい、というタイミングで遺伝カウンセリングを活用してもらえるとよいのかな、と個人的には考えています。

 

2遺伝カウンセリングではどんなことを相談できるの?

 遺伝カウンセリングで、具体的にどのようなご相談があるか、これまでに患者さんやご家族から寄せられたご相談を一部ご紹介してみたいと思います。

 

ご家族からの相談
  • 子どもが遺伝性疾患と診断を受けた。でも、まだ子どもの疾患を受容できない。
  • まずは気持ちの整理をしたいんだけど・・・。
  • 遺伝ということは自分たちのせいなのでしょうか・・・?
  • 染色体検査/遺伝子検査では何がわかるのか。
  • 子ども(本人、きょうだい)に体質のこと、遺伝のことをどう話したらよいか。
  • 就園、就学の際の学校とのやり取りで困っている。他の人はどうしている?
  • そろそろ次の子を考えようと思っているけど、出生前診断って・・・?

 

お子さん(患者、きょうだい)からの相談
  • 治療はいつまで頑張ればいい?
  • 病気のことが心配、周りに心配されることが嫌。
  • みんなと違うことが恥ずかしい、みんなに見られることが嫌。
  • なんで自分のきょうだいは病院に行っているの?
  • そもそも、この病気ってどんな病気なの?
  • 結婚したい人ができたら、自分はどうしたらいい?どんなことを伝えればいい?
  • 自分の子どもへの遺伝が心配。

 

 それぞれの立場やライフイベントの状況、理解の段階によってもご相談は全く異なります。また、患者さんがどの疾患と診断されているか、遺伝子検査でどのような結果が得られているかによって、お伝えしなければならない医学的・科学的情報やその情報を元にどう考えていくか、はそれぞれ違っています。

 遺伝カウンセリングでは、まず、今どんなことが気になっているのか、心配なのか、をお聞きし、その上で検討していきたいことを一緒に整理していきます。考えていくために必要な科学的・医学的情報をお伝えし、その情報をどう考えていくか、これからの生活にどう反映していくかを検討していきます。一度の来談(遺伝カウンセリングでの相談)で解決する方もいらっしゃれば、ゆっくりと時間をかけ、何度かの来談を経て一緒に答えを見つけていく方もいらっしゃいます。

 

3.遺伝カウンセリングを利用するためには?

 今現在、通院している病院に遺伝カウンセリングの部門や認定遺伝カウンセラーが在籍している場合には、主治医の先生を通して相談をしてみましょう。また、お近くの病院で遺伝カウンセリングの窓口があるかを検索するには、検索エンジン等で「○○(お住まいの地域)、遺伝カウンセリング」というワードで検索をいただくと近隣の医療機関のHPが見つかるかと思います。また、全国遺伝子診療部門連絡会議が、「登録機関遺伝子医療体制検索・提供システム」というHPを準備しています。こちらのHPからお近くの施設を検索いただくことも可能です。

URL: http://www.idenshiiryoubumon.org/search/

 

 遺伝カウンセリングの費用についても、ご相談いただく方が患者さんかそのご家族か、どういった内容のご相談かによって保険診療、自費(自由)診療の対応が異なります。お問い合わせの際に確認をしてみましょう。

 

4.皆さんにお願いしたいこと

 今回は、遺伝カウンセリングについて少し詳しくお話をさせていただきました。この記事をご覧になっている方の中にも、遺伝カウンセリングを受けた方、まだ受けたことがない方がいらっしゃると思います。皆さんのお近くには、そもそも遺伝カウンセリングや認定遺伝カウンセラーを知らない、遺伝のことを相談する窓口を知らない、という方もいらっしゃるかもしれません。この領域はまだまだ認知度の低い医療の分野の一つです。もし、お知り合いの方から「こんなことで悩んでいるんだよね。」と遺伝に関するお悩みやご心配をお聞きになった時には、相談できる窓口があることをお伝えいただけると嬉しいです。

 

 

全文PDFは以下からダウンロードできます。

JaSMIn通信特別記事No.59 (秋山先生)